第6章 距離感
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「泊まっていっても良かったのに。」
佐久間さんはそう笑いながら、福岡土産の明太子を冷蔵庫へとしまった。
そうは言われても、恋人でもない男性の家に泊まるのは抵抗がある。
「…福岡でお仕事だったんですか?」
「そうだよ。結構寒かった。」
いつものように笑う佐久間さんの顔を見て胸がときめいた。
こうして佐久間さんの家でご飯を作りながら帰りを待てた事が本当に嬉しい。
「留守中、コロはどうだった?」
「すっかり私とも仲良しになりましたよ。」
「そっかぁ。俺がいなくて寂しいって言ってなかった?」
荷ほどきをする佐久間さんの足元にまとわりつくコロを見ながら笑う。
佐久間さんがいなくて寂しかったのは…きっと私の方だ。
「ごめんね、ご飯食べたいなんてワガママ言っちゃって。」
「いいえ、これくらいはさせて下さい。」
「どうしても先生の作った味噌汁が飲みたかったの。」