第6章 距離感
「ねぇ、先生って彼氏いるの?」
「えっ?」
彼女からの突然の問いかけに、思わずパンを喉につまらせそうになる。
生徒からそんな事を聞かれるとは思ってもいなかった。
そもそも私は恋愛などの類いの話はあまり得意ではない。
「私も話したんだから先生も教えてよ。」
そう彼女に詰められ、思わず顔が赤くなる。
「…私は別に。」
「いないの?」
「いないよ。」
「じゃあ、何でそんなに動揺してるの?」
「それは…」
「不倫中とか?」
「違うよ!!」
「じゃあ何?」
私の反応を見ておもしろがっているに違いない。
しかし、彼女は私に“真実”を打ち明けてくれた。
それならば、私も“真実”で応えるべきなのではないか。
例えそれが生徒であっても…。
そう思えた。
「好きな人はいる。」
「ウケる。」
真剣な眼差しで応えた私の言葉に、彼女は無邪気に笑った。