第6章 距離感
愛美先生とはあまり恋愛の話をした事はなかった。
しかし、愛美先生ほどの女性に彼氏がいないとは思えない。
長年付き合っている恋人がいるのではないか…そんなイメージだ。
「彼氏と旅行とか…マジうらやましい。」
「…そうだね。」
「私もしたいな…村瀬先生と。」
ため息をつくように彼女はそう言った。
“私、村瀬先生と付き合ってるの”
彼女からそう打ち明けられてから、村瀬先生の話を聞くのはこれが2回目だ。
彼女の言う通り、教師と生徒の恋愛など、旅行どころかデートすらまともに出来ないだろう。
「…あと2年待ったらどこへだって行けるよ。」
「2年か…。私には“永遠”に思える。」
「…あっという間だよ。」
16歳の少女には、2年など何万光年も先の事に感じてしまうだろう。
もし私が彼女なら…2年後の事など考えられないと思う。