第6章 距離感
なんとなく部屋の中を見渡す。
広いリビングにはあまり物が置かれていない。
黒を基調としたモデルルームのような室内。
備え付けの大きな戸棚が1つ。
ソファーとテレビの間にはローテーブルが置かれているだけだ。
あまり物を持たない主義の人なのだろうか…。
他人の部屋をあれこれ見てまわる趣味などないが、佐久間さんが普段どんな部屋で過ごしているのかには少し興味があった。
寝室やバスルーム…寝具の色や使っているシャンプーなど、今となっては佐久間さんの全てが興味の対象だ。
この部屋で佐久間さんはどのように過ごしているのだろう。
このソファーに座り、テレビを観ているのだろうか。
一日の終わりにはシャワーを浴び、寝室で眠る。
一体どんな夢を見るのだろう…。
いや、バスルームもどうかとは思うが、寝室が見たいなどと考えている私はどうかしてしまったのではないかと我に変える。
“絶対に入らないでほしい”と言っていた部屋が、もしかすると寝室だったのかもしれない。