第2章 高校教師
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家に着くのは、だいたいいつも8時頃だ。
そこから夕食の支度をし、食べ終えるのはいつも9時過ぎ。
とくにする事もなく、ぼんやりと洗い物をする。
こうして静かな部屋に1人でいると、まるでこの世界に自分だけが取り残されてしまったような錯覚に陥る。
蛇口から流れる水の音。
その音に重なり、カチャカチャと食器のぶつかる音だけが響く。
死にたいわけではないが、時々生きる事をやめたくなる。
終わりのこない無限ループの日々。
しかし、私はこの毎日を続けるしかないのだ。
頭にあったのは放課後、屋上での出来事だった。
小松加奈。
退学になる事を望み、意図的にあの場所でタバコを吸っていたように思えた。
無断欠席が続いている彼女の事だ。
何か事情があっての事だったのかもしれない。
しかし、生徒のプライベートにどこまで立ち入るべきなのだろうか。
あれこれ詮索されるのを嫌う若者は多い。
どちらかと言えば私も好きな方ではない。
それでも、担任の教師には報告するべきだったと思う。
激しい後悔と自己嫌悪。
まるで誰かに殴られたような気分だった。