第5章 条件
今までアパートの部屋だけで会っていたせいかあまり感じた事はなかったが、こうして外で会ってみると、私と佐久間さんは明らかに不釣り合いだ。
それは以前、亮太と付き合っていた頃に感じていたもとは比べものにならない。
“住む世界が違う”
はっきりとそう感じる。
「それで、どうする事にしたの?」
「え?」
「いや、猫の事。
引っ越すのか、里親を探すのか。」
「…引っ越す事にしました。」
「そっか。」
「すぐにでも部屋を見つけます。
それまで佐久間さんにはご迷惑おかけしてしまいますが…本当にすみません。」
「いや、本当に迷惑だなんて思ってないから。
それより猫に入れ込みすぎないように気を付けないと、別れが辛くなっちゃうね。」
少し寂しそうな佐久間さんの横顔。
何て邪気がないのだろうと思う。
例え住む世界が違ったとしても、佐久間さんには惹かれてしまう不思議な魅力があるのだ。