第5章 条件
まるで子供のようだと、思わず笑ってしまった。
そんな私につられるように、電話の向こうで佐久間さんも笑う。
「だってカレーが一番好きなんだもん。」
「そうなんですね。
大丈夫です、作りますから。」
「ありがとう。」
「いいえ。」
「じゃあ、また後で。」と、佐久間さんは電話を切る。
初めての電話に少しの名残惜しさを感じつつも、これから会う約束に胸はときめいていた。
私は早足で近所のスーパーへと向かう。
早くカレーの材料を買って帰ろう。
佐久間さんの“職場”から私の住むアパートまでは少し時間がかかるらしいが、気持ちの準備には時間が必要だ。
いつもと変わらないスーパーまでの道。
その道が、何だかとても華やいで見えた。
足取りは軽く、心は弾む。
何てことのなかった今日が、特別な1日になるような…そんな気がしていた。