第5章 条件
「私、本当はタバコもコーヒーも苦手。
だって苦いじゃん。」
彼女はそう言っていた。
「じゃあ、どうして今までタバコを吸ったり缶コーヒーを飲んだりしていたの?」と、尋ねる私に彼女は少し恥ずかしそうにこう言った。
「村瀬先生の真似。」
彼女のその柔らかな表情からは、やはり村瀬先生との“特別な関係”がうかがえた。
恋人と同じ物を好むようになるのは、決して珍しい話ではない。
少しでも恋人の“色”に染まりたい。
そんな女性は多いだろう。
正直、彼女には聞きたい事が山ほどある。
一体いつから村瀬先生と恋人関係になったのか。
そして、それはどちらからだったのか…。
しかし、今は何も聞かずに見守ろうと思う。
彼女にとって村瀬先生の存在は、学校を辞めないただ一つの理由なのだから。