第4章 種
「たしかここってさ…。」
「ペット禁止なんです。」
「そうだよね。」
「何も考えずに連れてきちゃいました。」
「先生らしいね。」
「え?」
「俺も先生に“拾われた”からさ。」
そう、いたずらに笑う佐久間さんに胸がときめいた。
“拾われた”なんて言い方はあまり好きではないが、もし佐久間さんが猫であれば、今回と同じような状況だった。
酒に酔い、中庭で倒れていた佐久間さんを部屋へと連れて来た。
後先考えずに…。
そして、そのまま一晩共に過ごし、今こうして時々会う仲にまでなったのだ。
「引っ越すか、里親を探すか…ですね。」
「そうだね。」
「それまでは見つからないようにしないと…。」
こんな私に拾われてしまった子猫が、何だか気の毒に感じてしまった。
“里親”と言ってはみたが、こうしてスヤスヤと眠る子猫を見ていると離れるのは恋しい。
それでも、子猫のためにはきちんと選択をしなければならない。
引っ越すか…里親を探すか…。
どちらにせよ、少し時間がかかりそうだ。