第4章 種
それと同時に、細く長い佐久間さんの指に私の鼓動は早くなった。
男性にしては繊細な指先。
右手の小指にしている指輪がとてもよく似合っている。
指の動き、その仕草…前回会った時とは比べものにならぬほど意識して見てしまう。
これは間違いなく“恋”なのだと、そう改めて確信した。
「これからどうするの?」
「…え?」
「いや、この猫。飼うの?」
佐久間さんの指に見とれてしまっていたせいか、一瞬何を聞かれたのか理解出来なかった。
“どうするの?”という言葉が、まるでこれからの私達の事を聞かれているかのような錯覚を起こした。
私は佐久間さんと恋人になりたいのだろうか。
20歳も年上の佐久間さんと…。
いや、今はそんな事を考えている場合ではない。
今考えなければいけないのは、佐久間さんの膝の上で眠る“小さな命”についてだ。