第4章 種
「久しぶり。」
「あ…はい。」
玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは佐久間さんだった。
いつものように顔をクシャクシャにして笑う佐久間さんを見て、思わず笑みがこぼれる。。
それは子猫を連れ込んだ事に対するクレームではなかったという安心感。
しかし、それだけではない。
2ヶ月振りに会えた佐久間さんに胸が高鳴った。
佐久間さんへの“想い”を確信してから初めての再会。
わずかながらに心は動揺し、玄関のドアノブを掴む手が震えた。
「ごめん、突然。」
「いえ…。」
「誰か来てた?」
普段とは違う私の様子を察してか、佐久間さんは部屋の中の様子をうかがうようにドアの隙間から顔を覗かせた。
部屋の奥では、子猫がローテーブルの下でうずくまったままだ。
今は佐久間さんとの再会に感激している場合ではない。
「…どうぞ、中に入って下さい。」
状況が把握出来ず、戸惑った表情を浮かべる佐久間さんの腕を引き、私は静かに玄関のドアを閉めた。