第4章 種
「あっ!!」
慌てて鍋をコンロから下ろし、火を止める。
柄にもなく大きな声を出してしまった。
その声に驚いたのか、子猫は鳴くのをやめ、不思議そうな顔をしてこちらをじっと見つめている。
「ごめんね、もう少し待っててね。」
そう言いながら、鍋の中に残った牛乳を深めの皿に移した。
その時だった。
突然、部屋のチャイムが鳴った。
思わず身体が強ばる。
隣の部屋の住人だろうか。
それとも近所に住む大家だろうか…。
子猫を連れ込んだ事に対するクレームに違いない。
いくら何でも早すぎるだろうと、急いで玄関へと向かう。
部屋を見渡すと、チャイムの音に驚いたのか子猫はローテーブルの下に隠れてしまっていた。
何と言い訳をすればいいのだろう。
“預かっているだけです”
そう言えば納得してもらえるだろうか。
しかし、このまま居留守を使うわけにもいかない。
とにかく、この場をやり過ごさなければ…。
私は意を決し、玄関のドアを開けた。