第4章 種
とはいえ、猫を飼った経験などない。
動物を飼った事すらない。
子供の頃に拾ってきた子犬は、次の日の朝には姿を消してしまった。
とにかく身体を温めてあげようと、クローゼットの中から取り出したブランケットで包み込む。
しかし、居心地が悪かったのか子猫は私の腕をすり抜けていってしまった。
お腹が空いているのだろうか。
そう思い冷蔵庫の中を覗くが、子猫が食べられそうな物など無い。
もし佐久間さんが来た時のためにと作り置きしておいたおかずが数品入っているだけだった。
温めた牛乳なら飲んでくれるだろうか。
小さな鍋に牛乳を入れ、火にかける。
相変わらず子猫は鳴きながら部屋の隅でうずくまっている。
病院に連れて行くべきだろうか。
こんなに鳴いているのだから、どこか怪我をしているのかもしれない。
この時間に診てくれる動物病院を探さなければ…。
調べようと携帯電話に手を伸ばした瞬間、沸騰した牛乳が鍋から溢れだした。