第4章 種
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“彼女”が言うように、私は冷静に見えて感情的になりやすい。
小松加奈。
興味の無い素振りをして、よく観察していると思う。
こうして私は今日も、後先考えずに感情だけで子猫を拾ってきてしまった。
アパートはペット禁止。
入居してからこれまで何のトラブルも無く過ごしてきたが、今回ばかりはさすがにクレームが来るかもしれない。
子猫は先ほどから鳴き止む気配なく、部屋の隅でうずくまっている。
それでも見て見ぬふりなど出来なかった。
夜の公園に来る者などいない。
もし私が連れて帰らなければ、誰にも拾われずに子猫は衰弱して死んでしまっていたかもしれない。
私には子猫が必死で“生きたい”と言っているように見えた。
人生で二度も動物を拾うとは思ってもいなかったが、私が助けなければという強い使命感に駆られてしまったのだ。