第4章 種
じっと息を殺し、耳を澄ます。
猫の鳴き声は間違いなくこの段ボールから聞こえていた。
私は恐る恐るベンチの下から段ボールを引きずり出す。
もしこれが爆弾だったなら…そんなおかしな妄想をしながらゆっくりとガムテープを剥がした。
中から顔を覗かせたのは、一匹の子猫だった。
小さな身体を震わせながら、必死で声を振り絞り鳴く子猫。
まるで助けを求めているかのようなその姿に胸が締め付けられる。
「もう大丈夫だよ。」
とっさに猫を抱き上げた。
真綿のように軽い身体はとても冷たく、何時間もここに放置されていた事は明らかだった。
狭く暗い段ボールの中、誰に見つけられる事もなく力尽き、眠っていた所へ私がやって来たのだろうか。
そして、私の咳に驚き目を覚ました。
鳴き続ける子猫を強く胸に抱く。
黒い毛並みの小さな小さな命。
「今温めてあげるからね。」
その尊い命にただ涙が溢れた。