第4章 種
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夜の公園は驚くほど静かだった。
ベンチに座り、コンビニで買ってきたばかりの缶ビールを開ける。
こんな真冬に外で酒を飲むなんて、故郷の北国では考えられない。
燗酒ならまだしも、冷えたビールを飲む者などいないだろう。
深い深いため息をつき、空を見上げる。
冬の空は空気が澄み、星空が綺麗…と言いたい所だが星など見えるはずもない。
落葉樹の隙間から見える空はどこまでも藍色に塗り潰されているだけだ。
まっすぐ家へ帰る気にはなれなかった。
だからといって愛美先生を誘って飲みに…という心境でもない。
頭の中を巡っているのは彼女の言葉。
小松加奈。
正直、彼女がクラスの女子生徒からいじめを受けているだけであれば、私にも対応のしようがあったかもしれない。
しかし…
“私、村瀬先生と付き合ってるの”
何事にも経験の乏しい私はすでにキャパオーバーだ。