第4章 種
「…バカな女。」
そうつぶやくように吐き出した私の言葉に、彼女は驚いた表情を浮かべた。
本来であれば、もう少し言葉を選ぶべきだろう。
教師としての対応、大人としての対応をするべきだが、そんな事よりも怒りの方が勝ってしまった。
今まで教師はいつでも中立の立場でなくてはいけないと思っていた。
しかしこの4ヶ月間、私は自分が思っていた以上に彼女へ入れ込み過ぎてしまっていたようだ。
私は彼女が可愛い。
そんな彼女を傷付ける女など、フォローする気にもなれなかった。
「先生ってさ、冷静に見えて結構感情的だよね。」
「そうかもね。」
「何か…ウケる。」
クスクスと笑う彼女を見て少しだけ安心した。
しかし、それでも逆恨みのような嫌がらせに腹が立った。
今すぐにでも彼女の担任に報告し、相手の女子生徒に罰を与えたい…。
しかし、ここは少し冷静になるべきだ。
今優先すべきは彼女の心。
こうして辛い胸の内を明かしてくれた彼女の心に寄り添う事だ。