第2章 高校教師
遠くを見つめながら、彼女は制服のポケットから何かを取り出した。
それが何なのか、こちらからでは良く見えない。
手に収まる大きさ…携帯電話だろうか。
彼女に興味があった訳ではないが、何となくそれを眺めていた。
もともと彼女は入学当初から目立つ存在だった。
艶のある黒髪に白い肌。
切れ長の瞳。
長身で顔は小さく、モデルのように手足は長い。
すれ違えば誰もが振り返る美少女だ。
普通に考えればクラスの中心にいるようなタイプ。
しかし、彼女はいつも1人だった。
そんな彼女が制服のポケットから取り出したのはタバコだった。
慣れた手つきで火をつけ、煙を吐き出している。
今時、屋上でタバコを吸う生徒がいるのかと驚いたが、同時になぜ彼女がそんな行動を取ったのか不思議でならなかった。
さすがにこればかりは見逃す訳にはいかない。
正直彼女と関わるつもりはなかったが、一応教師という立場としては注意せざるを得ない。
深いため息をつき、私は足早に屋上へと向かった。