第2章 高校教師
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今日も昨日と同じ1日が終わる。
そう思い、職員室の前の廊下を歩く。
窓から差し込む朱色の光。
しかし、その先に太陽を見付ける事は出来ない。
狭い箱の中に閉じ込められているような息苦しさ。
この街に来て、私はずいぶんとたくさんの物を手放したような気がした。
子供の頃当たり前だった風景は、もう目の前にはないのだ。
ふと、向かい側の校舎の屋上に人影を見つけた。
風にひらりと揺れるスカート。
柵にもたれ、どこか遠くを見つめている。
それが1年A組の小松加奈である事はすぐにわかった。
つい数日前開かれた職員会議の中で、彼女の名前が挙がっていたからだ。
夏休みが明けてから無断欠席が続いており、このままではいずれ出席日数が足りなくなるだろう。
もともとクラスでも孤立した存在だったと担任の教師は言っていたが、事なかれ主義の私達の話し合いはそこで終わっていた。
当然ながら高校は義務教育ではない。
嫌なら辞めればいい。
少なくとも、私はそう思っていた。