第4章 種
「私、小さい頃から友達少なくて。
高校時代も一人でいる事が多かったの。」
「マジ?でも、それってあまり言わない方が良いよ。」
「どうして?」
「“ぼっち”って惨めじゃない?」
「惨めなんかじゃないよ。たまたま気の合う人に出会えなかっただけだよ。」
「超ポジティブだね。」
缶コーヒーを飲みながら、彼女は呆れた声でそう言った。
一人でいる事が惨め…。
そう感じた事など今までなかった。
高校時代の私の立ち位置は、“大人しく地味な人”だ。
それを自分でも理解していた。
誰に話し掛けられる事もなく空気のように席に着き、ただ本を眺めるだけ。
クラスの中心になった事もなければ注目された事もない。
それが私にとっての“当たり前”であり“日常”だ。
だからこそ“惨めさ”なんてものは感じた事がない。
“惨めさ”を感じるのは、一度でも光を浴びた事がある人間…そう思っている。