第4章 種
少しすねたように彼女はそう言ったが、私達の関係は間違いなくただの“同僚”だ。
いくら仲が良かろうともそれは変わらない。
壁を作っている…という訳ではもうないが、やはりある程度の距離感は大切だと思う。
「先生ってさ、友達多かった?」
「どうして?」
「高校生の時とか…どんな感じだったのかなって。」
「そんなに今と変わらないよ。」
「じゃあ…“友達いない系女子”?」
「うん。“教室の端で本を眺めてる系女子”。」
そう冗談まじりで応えた私に、彼女はふふっと笑ってくれた。
そんな彼女の柔らかな笑顔が可愛いく見え、思わず顔がほころぶ。
まさか自分の学生時代の事を聞かれるとは思ってもいなかった。
しかし、16歳である彼女にとっては、今の私の話よりも高校時代の私の話の方が身近なのだろう。
こうして放課後の屋上で過ごすようになってから、初めて彼女が興味を持ってくれた話題。
とくに披露出来るようなエピソードは無いが、もう少し…彼女と同じ“16歳の頃の自分”の話をしてもいいだろうか。