第4章 種
不満気な表情を浮かべながらも、彼女は鞄の中へとキーホルダーをしまう。
文句を言いつつも受け取ってくれた彼女が何だか妙に可愛いく思えた。
大人びた容姿をしていてもまだ子供。
私とは違い、彼女は10代という希望に満ちあふれた時を生きる若者なのだ。
「ねぇ、これ愛美先生にもあげたの?」
「え?」
「…最近仲良いじゃん。」
「愛美先生にはお菓子。」
「私もお菓子が良かった。」
「今度ね。」
彼女の言う通り、あれから愛美先生とは何度か食事に行った。
絶品と言っていた焼き鳥屋のもつ煮込みも食べた。
愛美先生は話題が豊富で、自分の事を話すのがあまり得意ではない私にはストレスを感じない相手だった。
酒を飲み、楽しい話に耳を傾ける。
愛美先生との食事は、今の私のちょっとした“楽しみ”だ。