第4章 種
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「何これ?」
「“ホッキ貝”のお寿司をモチーフにしたキャラクターらしいよ。」
「…これって可愛いの?」
「可愛いかどうかは分からないけど、流行ってるみたい。」
「…へぇ、北海道の人って変わってる。」
放課後の屋上、彼女は私がお土産に買ってきた“ゆるキャラ”のキーホルダーを不気味そうに見つめている。
小松加奈。
愛美先生からの指摘によりタバコを止めた私達は、こうして缶コーヒーを片手に屋上での一時を過ごすようになっていた。
それは短い冬休みが終わった今も変わらず、寒い屋上で白い息を吐きながら他愛のない会話をする。
いつの間にか、彼女と過ごす時間は生活の一部となってしまった。
それは彼女にとっても同じだろう。
とくに話す事もないのに、こうしてほとんど毎日屋上へやって来る。
“ただタバコが吸いたかった”
もう、それだけの理由ではないはずだ。