第4章 種
母の営む喫茶店は、古民家を改装したレトロな雰囲気の店だ。
教会群のあるこの街並みにも溶け込み、地元の客だけではなく観光客にも人気があるらしい。
12月31日に店を開ける事もないと思うのだが、母曰く、コーヒーを飲むのが日課になっている客もいるからとの事だった。
さすがにアルバイトの店員には休みを取らせたそうだが、そうなると母一人で店を回さなければならない。
何か手伝える事があれば…。
毎年の事ではあるが、一応様子が気になり見に来てしまった。
通りを渡り、店の正面にある大きな窓から中をのぞきこむ。
店内には数人の客と、笑顔で接客する母の姿があった。
そんな母が笑顔を向ける先…カウンターに座る一人の男。
その男もまた、コーヒーを飲みながら母へと笑顔を向けていた。