第1章 オレの家に来るって
ジュースやお菓子を広げてしばらくなんてことない会話を楽しんだ後、桃浜の持ってきた映画のDVDを2人で見始めた。
桃浜は特別映画好きという訳でもないみたいだが、話題作はチェックすることにしているらしい。そんな訳でオレたちはよくこうして映画を見るのだ。まあオレも映画は嫌いではない。…が、今日の映画は少しまいった。開始してすぐに話の展開が読めてしまった。こうなると面白みがなくて、てんで集中できない。
オレは仕方なく、画面ではなく隣に座る桃浜の横顔を見た。桃浜はオレと違って映画に集中しているらしい。
ああ、桃浜の横顔は本当に可愛いなあ。そうだ、映画よりもこっちを見ている方が断然いい。
オレは桃浜との距離をせばめると、彼女の手を握り、そのまま自分の膝の上に乗せた。桃浜は一瞬だけチラとこちらを見たが、特に気にせずまた映画へ視線を戻した。
つまり、握っていていいということだ。やったな。
桃浜の手はすべすべしてとても可愛い。女子の手ってこんなに小さくて柔らかいんだな。もちろんそんじょそこらの女じゃなくて、桃浜だからこんなに可愛いんだが。肌も白くてオレとは全然違う。可愛いな、本当に、可愛い。
もっともっと桃浜を近くに感じたくて、オレは桃浜の肩に手を回して抱きついた。
桃浜の髪からはふわりといい匂いがする。フローラルだかフルーティだか、よく知らないが、桃浜は匂いにとても気を使うのだ。だから彼女の服も体も、いつもとてもよい香りに包まれている。もちろん香料のためだけでなく、桃浜自身がよい匂いであることは言うまでもない。スンスンとその匂いを鼻いっぱいに吸い込んでいたら、
「伊豆くん、ちょっと邪魔」
と怒られた。
そうだな、今のはオレが悪かった。でも桃浜が可愛すぎるのもいけないんだぞ。