第8章 美しい人
「すまぬな。
俺にはもう心に決めた相手がいるのでな。」
そう言う三日月さんの声が聞こえる。
ふーん…心に決めた相手かぁ…
いまつるちゃんの言ってた甘味処の娘さんかな?
可愛かったもんなぁ…
なんてことを考えていると、
いつの間にか三日月さんは女の人達のもとから抜け出し、私の隣にいた。
「アリス、待たせてしまってすまない。
それでは行こうか。」
そう言って、手を繋がれる。
『うん!!』
嬉しくて、
繋がれた手にちょっとだけ力をこめる。
そんな私の嬉しい気持ちは、
後ろから聞こえた声にひゅっと冷たくなった。
「なにあれ、マネージャー?」
あ、そっか…
私じゃ、恋人とかには見えないんだ。
馬鹿だなぁ…私。
恥ずかしいのと、
涙が出そうなのとで私は少しうつむいた。