第11章 お家デート
「実は…親父のヤツ、しばらく海外へ行く事になったんだ」
「…えっ……」
「詳しくは聞いてねーけど…なんか向こうで色々事業始めるらしくて。こっちの会社は全部兄貴に任せるらしい」
「……、」
リアンくんの口から初めて聞く"兄貴"という言葉。
勿論異母兄弟になるのだろうけれど、一体どんな人なんだろう…
「まぁ年末くらいはこっちに帰ってきそうだけど…それまでしばらくは五月蝿く言われねーと思う」
「…そっか」
「ホントは1週間前この話をしようと思ってアンタに会いに行ったんだけど……まさかあんな事になるとはな」
「っ…」
"あんな事"とは勿論、私とリアンくんと皐月くんの3人が奇妙な関係になってしまった事を指しているのだろう。
居たたまれなくなった私は言葉を詰まらせ、思わず俯いてしまう。
そんな私に彼はこう言ってきた。
「アンタの事だから、まだ罪悪感とかあるのかもしれねーけど…そういうの一旦忘れて」
「…え……?」
「今日のアンタ…なんかずっとぎこちない」
「ぅ…」
「俺とこういう関係になった事…まだ戸惑ってんだろ?」
「……、」
それはそうだ。
元はと言えば優柔不断な私のせいなのだが、正直今だにまだ実感が湧かない。
リアンくんも皐月くんも、私の恋人だなんて…
「俺といる時は俺の事だけ考えてくれればそれでいいから」
「…リアンくん……」
(またそうやって私を甘やかすんだから…)
でもその言葉に私は救われる。
狡い事だけど…今はまだ2人を好きでいていいんだって…
「つー事だから…」
そう言って彼は突然横になり、私の膝の上に頭を乗せてきた。
俗に言う"膝枕"というやつだ。
「…今日は思う存分イチャイチャしようぜ?」
「っ…」
(…寝ちゃったし)
イチャイチャしようと言っておきながら、それから少ししてリアンくんは私の膝枕で眠ってしまった。
彼いわく、昨晩はあまりよく眠れなかったらしい……私に会えるのが楽しみで。
そんな可愛い事を言われれば、当然怒る気も無くなってしまって。
(急に可愛い事言うんだから…)
そう心の中で悪態をつきながら、彼の髪を優しく梳く。
するとうっすら目を開けた彼が、「それ気持ちイイ…もっとして」と甘えるような声で強請ってきた。
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