第11章 お家デート
『明日うちに来て』
リアンくんからそんなメールを貰ったのは昨夜の事。
理由も何も書かれておらず、ただそのひと言だけが記されたそれは彼らしいと言えば彼らしい。
一体何の用だろうと不思議に思ったが、特に予定も無かった私はその誘いを受ける事にした。
けれど…
(何着て行こう…)
彼と奇妙な関係になって早1週間。
一応"恋人"というものになったのだからそれなりの格好はしたい。
(どこか出掛けるのかな…?)
でもそれなら初めからどこかで待ち合わせをするだろう。
結局悩んだ末、私は買ったばかりのシンプルなワンピースを着て行く事にした。
「…いらっしゃい」
「……、」
暑い中歩いてきた私をリアンくんは笑顔で出迎えてくれた。
いつもの意地悪そうな顔ではなく、優しい笑顔で。
その表情に思わず胸を高鳴らせる。
元々端正な顔立ちをした彼だが、そんな彼が自分の恋人なのだと思うと余計にドキドキしてしまって。
この家を訪れるのは初めてな訳じゃないのに、つい緊張してしまった。
「アイスティーでいい?」
「…うん」
部屋に通され、ソファーに座るよう促される。
改めて見ても本当に広い部屋だ。
こんな広い部屋で一人暮らしなんて、私だったら淋しくて耐えられないかもしれない。
「悪かったな…暑い中歩かせて」
そう言って彼は淹れてくれたアイスティーを私に差し出し、隣に腰を下ろした。
私は早速彼に用件を聞く。
「私に何か用だった?」
「…用っつーか……アンタに会いたかっただけ」
「…え……」
「俺たち恋人だろ?彼女を家に呼んじゃいけない訳?」
「……、」
改めてそう言われると何だか照れ臭い。
彼は純粋に私を招待してくれたのだ。
「まぁ…アンタに話があったっつーのもあるけど」
「…話?」
「ああ……親父の事」
「……、」
その言葉にドキリと心臓が跳ねる。
先程とは違う緊張感…
そう言えば…彼はこんな風に私と会ったりして大丈夫なのだろうか?
もし私とリアンくんの関係が彼のお父さんにバレたりしたら…
「…そんな顔すんなって。親父の話っつっても別に深刻なもんじゃねーから。むしろ俺たちにとっては朗報」
「……、そうなの?」
不安な声を出す私に彼はこくりと頷いた。
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