• テキストサイズ

*トライアングル*【R18】

第2章 出会い





(何だったの、今の…)

息を切らせて走りながら、桜子はたった今起こった出来事を頭の中で反復していた。
指とは言え、初対面の見知らぬ美少年にキスをされてしまった。
見た目も名前も外国人のようだったし、単なる挨拶のつもりだったのだろうか?

(それにしては日本語上手かったけど…)

とにかくさっきの事は忘れようと、桜子は急いで店へ戻った。

するとそこに…


「…まいったな」

「…?」

店のすぐ傍で、困ったように溜め息をついている男を見つけた。
屈んでいる彼の脇には本人の物と思われる自転車が停めてある。
ひょっとしてタイヤがパンクでもしてしまったのだろうか?


「あの…どうかされましたか?」

店の横で困っている人間を放っておける訳もなく、桜子は迷わず声を掛けた。
それに驚いた男はハッとして立ち上がる。
屈んでいる時は分からなかったが、かなり背の高い青年だ。


「……、」

「…?」

こちらを見つめるばかりで言葉を発しない青年。
桜子が「あのー…」と困ったようにもう一度声を掛けると、彼はようやく理由を話し始めた。


「あっ、すみません……タイヤがパンクしてしまって…」

予想通りだった。
桜子は彼にそこで待つよう告げ、急いで店の中へ入る。
叔父だったら、応急処置の仕方を知っているかもしれない。



「ああ、困ってるのは君か」

少しして青年の元にやって来た叔父の手には、パンクの応急処置に使える修理剤があった。
幸い空いた穴は小さく、叔父いわく修理剤で何とかなるレベルという事だ。


「よし、これで一先ずは大丈夫だろう。けどこれは飽くまでも応急処置だからね、早めにちゃんと修理してもらいなさい」

「はい、ありがとうございます!」

青年はその大きな体を折り曲げて丁寧にお礼を言った。


「あの…俺、神浦皐月って言います。今度改めてお礼をしたいんですが…」

「はははっ!そんな事気にしなくていいよ」

「ですが…」

「だったら今度、コーヒーでも飲みに来てくれないか?うちの可愛い姪に接客させてもらうよ」

「もう、叔父さん…」

「叔父さんじゃなくてマスターだろ?」


そんなやり取りをする2人にもう一度お礼を言い、彼は颯爽と自転車で走り去った…



.
/ 248ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp