第7章 揺れる心
「ちょ、ちょっと…そのままじゃ風邪引いちゃうでしょ」
「…平気」
引き止める私にそう答えると、リアンくんは振り向いてこう言った。
「今部屋に入ったら……きっと俺…アンタの事メチャクチャに抱いちまうと思うから」
「っ…」
その言葉にぴしりと体が固まる。
そんな私を見て切なげに笑うと、彼はその場から立ち去っていった。
(一体何なの…)
明らかにいつもと様子が違った彼。
悲しそうな切なそうなあの表情を思い出して胸が苦しくなる。
彼があんな顔をするなんて…
その夜私は心配になって「何かあったの?」と彼にメールを送ってみたが、彼からの返信は無かった…
それから1週間後…
相変わらずリアンくんからの返事は無い。
電話をしてみようかとも思ったが、メールの返信が無い以上私には話したくない事なのだろう。
(別に私…彼女な訳じゃないしね…)
そう思うと何となく淋しかった。
「あーもう、やめやめ!」
こんな晴れた休日に引きこもってなんかいるから余計な事を考えてしまうのだ。
そろそろ夏物の服も欲しいし、買い物でもして気分転換してこよう。
そう思って私は家を出た。
(…結構買っちゃったな)
よく買い物へ行く駅ビルでは、どのショップでも夏物が売り出されていた。
自分好みの服が沢山あってついつい買い過ぎてしまい、気付けば両手いっぱいに荷物を持っている。
それから休憩がてらカフェでお茶をし、そろそろ帰ろうと駅を出ようとした時…
(あれ…?)
人混みの中に見覚えのある顔を見つけた。
あんな綺麗な顔を見間違えるはずない……リアンくんだ。
私は無意識に人混みを掻き分け、彼に声を掛けようとした……けれど。
「……、」
彼は1人ではなかった。
その隣を並んで歩いているのは、リアンくんにも引けを取らない綺麗な顔立ちをした女の子…
(…誰…だろう……)
大学の友達…とか?
それにしては随分親しいように見える。
リアンくんの腕を取る女の子と、彼女に対して笑顔を見せる彼。
私にはあんな笑顔見せた事ないくせに…
なんて、ついつい嫌な事を考えてしまった。
ひょっとして私にメールも電話もしてくれなくなったのは彼女が原因なのだろうか?
(もう…私の事なんか興味無くなったの…?)
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