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*トライアングル*【R18】

第7章 揺れる心





(今日は美鈴と話せて良かった…)


彼女と別れた帰り道…私の心は軽くなっていた。
悩みが解決した訳ではないが、相談出来る相手がいるというだけでも心強い。
何より「私の味方」だと言ってくれた彼女の言葉が一番嬉しかった。

(これからはちょくちょく連絡取ってみよ)

あっ、でも彼氏がいるんじゃ悪いかな…?

そんな事を考えていた矢先…


「わっ…、雨…?」

ぽつぽつと大粒の雫が顔に落ちてきた。
そう言えば今日は夕方から天気が崩れるって天気予報でも言ってたっけ?
それなのに折り畳み傘を持って来なかった自分を呪う。
雨足はすぐに強くなり、私は急いで自分のアパートまで走った。





(結構濡れちゃったな…)

ハンカチで手や腕を拭いながら、部屋までの階段を昇る。
すると部屋の前にフードを被った人物がいる事に気付いた。

(だ、誰…?)

一瞬恐怖を覚えたが、近付くにつれその正体が誰なのかハッキリする。


「リアンくん!?」

「………」

そこに立っていたのはパーカー姿のリアンくんだった。
彼も雨に降られたのか、その体はびしょ濡れだ。


「もう…驚かさないでよ」

彼だと判りホッとする。
「急にどうしたの?」とその顔を覗き込めば、彼は無言で私を抱き締めてきた。


「ちょっ……何…っ、」

「………」

「リアンくん!」

声を掛けても彼は無言のまま。
一体どうしたというのだろう…


「ね、ねぇ…とりあえず放してくれない?このままじゃ2人とも風邪引くし…」

「………」

「今タオル持ってくるから…」

諭すようにそう言うと、彼はようやく体を離してくれた。
「ちょっと待ってて」と声を掛け、バッグの中から鍵を取り出そうとすると…


「…!」

その腕を掴まれ強引に唇を奪われた。
何が何だか解らない私は抵抗するのも忘れ立ち竦む。
けれどそのキスは触れるだけのもので、リアンくんの顔はすぐに離れていった。


「も、もう!一体何なの…」

そう怒ろうとしたが出来なかった。
彼があまりにも悲しそうな顔をしていたからだ。
彼のこんな表情を見るのは初めてで…


「……帰る」

「え…?」

「アンタの顔…見たかっただけだから……」

「……、」

そう言って彼は踵を返す。
普段の彼なら図々しく部屋に上がり込んできそうなものなのに…



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