第7章 揺れる心
美鈴のこういうところが本当に好きだ。
一見ずけずけと人のテリトリーに踏み込んでくるようにも見えるが、ちゃんとこちらの気持ちも考えて一歩引いてくれる。
高校時代から今だに彼女との友人関係が続いているのは、相手を気遣ってくれるその性格にあるのだろう。
(このまま1人で悩んでいても解決しないかもしれない…)
そう思った私は意を決して、今悩んでいる事を彼女に打ち明けた。
「えー!2人からも!?」
「ちょっ…声が大きい!」
私の話を一部始終聞いた彼女は声を上げて驚いている。
「しかも年下とか…羨ましい……」とブツブツ呟きながら…
「私は真剣に悩んでるの!」
「ごめんごめん、解ってるって」
「もぅ…」
本当に解ってるのかな…
「つまり桜子はどっちの事も好きって事?」
「え…」
「だってどうでもいい相手ならそんなに悩まないでしょ?『あなたとは付き合えません』て断ればいいだけの話だし」
「………」
「ちょっと…もしかしてそんな事にも気付いてなかったの?」
「……、」
(私が2人の事を好き…?)
よく考えたら、今までちゃんとそう思った事は無かったかもしれない。
…いや、考えないようにしていただけかもしれないが。
2人の事を好きだと認めれば、私はこの先どうすればいいのか余計に分からなくなるからだ。
「でもさー、相手は返事を待つって言ってくれてるんでしょ?悩むだけ悩めばいいんじゃない?」
「けど……それでもし答えが出なかったら?」
「………」
私がそう尋ねると、彼女は少し考えた後また真面目な顔に戻った。
「それはどっちも選べないって事?」
「う、うん…」
だって…当たり前だけど……
リアンくんも皐月くんもまるで性格が違う。
リアンくんは生意気だけど、時々妙に可愛いところがあって憎めないし…
皐月くんは優しくてイイ子だけど、そうじゃない一面もあって…
どちらも私をドキドキさせてくる。
こんなどっちつかずな気持ちは狡いって解ってるけど…
「あぁもう、そんなこの世の終わりみたいな顔しないの」
「……、」
美鈴にそう指摘され、私は我に返った。
「自分に正直になるのが一番だと思うよ?」
「え…?」
「2人の事が好きなら、それはそれでいいんじゃない?」
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