第7章 揺れる心
「桜子ー!ごめん、お待たせ!」
「ううん、私も今来たとこだから大丈夫」
ある日の休日。
私は高校時代の友人、美鈴とランチする約束をしていた。
卒業してから度々連絡は取っていたものの、彼女は地方の大学へ行っていた為こうして顔を合わせるのは4年ぶりになる。
大学を卒業したこの春…彼女はこちらでの就職が決まり、またこの街での生活が始まったので、是非一度私に会って食事がしたいと誘ってくれたのだ。
「それにしても…桜子は一段と綺麗になったよねー」
「そ、そんな事…」
レストランで食事をしながら積もる話をしていると、彼女は唐突にそう言ってきた。
「またまた謙遜しちゃって…。桜子の事好きな男子から色々相談受けてたあの頃が懐かしいわ」
「えっ…何よそれ」
「桜子は鈍いから知らなかったかもしれないけど…。あんた、影では相当モテてたのよ?…まぁ私は親友を売る趣味は無いし、好きなら当たって砕けなっていうアドバイスくらいしかしなかったけどね」
「……、」
(そんな事全然知らなかった…)
「…で?今彼氏は?」
「っ…」
突然された質問に、飲んでいた水を思わず吹き出すところだった。
「わー、その反応怪しい」
「み、美鈴こそどうなの?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました。実は同期で入った子と妙に気が合っちゃってさ。最近付き合い始めたんだ」
「そうなんだ…良かったね」
「…で?桜子は?」
「ぅ…」
話を逸らそうとしたが、どうやら無理なようだ。
私が話すまでこの話題は終わらないらしい。
「私は別に…」
一瞬リアンくんと皐月くんの顔が思い浮かんだが、彼らとは付き合っている訳じゃない。
「え~、なーんか怪しいなぁ。じゃあ好きな人は?」
「っ…」
それはもっと困る質問だ。
私は一体彼らの事をどう思っているんだろう…
「桜子…もしかして、なんか悩んでる?」
今度は真剣な顔でそう聞いてくる彼女。
確かに悩んでいるのは事実…
けれどその悩みの種を話したら、呆れられるかもしれない。
「もう…私と桜子の仲でしょ?…まぁ無理には聞かないけどさ…話すだけでも気が楽になるかもしれないし、話すだけ話してみない?」
「…美鈴……」
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