第6章 春の嵐
「さっきはプレゼントなんかいらないって言いましたけど……1つだけ俺のワガママ聞いてもらってもいいですか?」
「…え……?」
「今日一日が終わるまで……俺を桜子さんの恋人にして下さい」
「っ…」
真剣な顔で皐月くんがそう言ってきた。
私はすぐに答える事が出来ず、言葉を詰まらせて俯く。
「…桜子さんに彼氏がいるのは承知です。絶対に無茶な事は言いませんから」
「……、」
一瞬何の事だか解らなかったが、『彼氏』とは恐らくリアンくんの事だろう。
そう言えば勘違いされたまま、タイミングを逃して訂正するのを忘れていた。
「あの、皐月くん……前から言おうと思ってたんだけど…」
「…?」
「リアンくんは……彼氏じゃないの」
「え…?」
「ごめん……なかなか言うタイミングが無くて…」
彼の話題も出てないのに、突然そんな話をするのもおかしいし…
皐月くんは少しの間驚いたような顔をしていたが、その表情が急にパァッと明るくなった。
「それ…本当ですか?」
「う、うん…」
そう答えれば、一度放された体をまた抱き締められる。
さっきよりぎゅっと力強く…
「良かった…。じゃあ、俺にもまだ望みはあるって事ですよね」
「え…?」
「元々諦めるつもりなんてありませんでしたけど…これからは遠慮しません」
「……、」
(それってどういう意味…)
そう思った時には皐月くんにお姫様抱っこをされ、すぐ傍にあったベッドの上に下ろされていた。
「ちょっ…、皐月くっ…」
「今日は俺…桜子さんの彼氏ですから」
「っ…」
そう目を細めて彼は私を見下ろす。
その表情に思わず胸がときめいてしまった。
このまま流されてはいけないと心のどこかでは思っているのに、体が言う事を聞かない。
「桜子さん……好きです」
「…!」
彼の顔がゆっくり近付いてくる。
「待って」と抵抗した両腕は、あっさりシーツに縫い付けられてしまった。
「ごめんなさい……今日は待てません」
「んっ…」
彼の熱い唇が私のものに触れる。
初めは優しかったその行為も、徐々に力強く押し付けるような触れ方に変わり、終いにはぬるりと舌が入ってきた。
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