第6章 春の嵐
「はっ…ん、」
私の腕を掴んでいた皐月くんが、キスを続けながら指を絡ませ手を握ってくる。
まるで恋人同士のように…
「桜子さん…石鹸のイイ匂い」
「んっ…!」
首筋に顔を埋め、チュッとそこにキスをしてくる彼。
それに反応して肩を竦めると、クスリと笑う彼の吐息が聞こえた。
「…桜子さんて敏感なんですね」
「そんな事…」
「…こっちは?」
「ぁっ…」
今度は耳にキスをされる。
擽ったさに身を捩る私に気を良くしたのか、彼は舌でそこを愛撫してきた。
「ゃっ…、」
「…耳…好きなんですか?」
「ちがっ…」
「桜子さんは可愛いですね…。少し苛めたくなります」
「んっ…」
耳を愛撫しながら、彼は自分の人差し指と中指を私の口内へ侵入させてくる。
2本の指がぬるぬると舌の上を滑り、妙に厭らしい気分になってきた。
「…桜子さん気付いてます?さっきから腰が動いてますよ」
「っ…」
耳元でそう指摘され、カアッと顔が熱くなる。
そして自分の下腹部がじんわり疼いている事に気付いた。
「…こっちも触らせて下さい」
「っ…、だめ…!」
寝巻きの隙間から入ってきた彼の手が太腿を撫でてくる。
その手をぎゅっと掴むと、彼が私の顔を覗き込んできた。
「…絶対に最後まではしませんから」
「…っ、でも……」
「俺…桜子さんにもっと気持ち良くなってほしいんです」
「……、」
真っ直ぐで綺麗な瞳が私を捕らえる。
…私は彼のこの目に弱い。
けれどそれでも頷けずにいると、彼が私の手を取り指先にキスをしてきた。
「…俺…今日は桜子さんの彼氏ですよね?」
「…!」
「…ダメですか?」
「ぅ…」
(そんな言い方ズルい…)
普段は優しくて穏やかな彼だが、時々すごく強引な一面がある。
計算なのか無意識なのかは分からないけれど(恐らく後者だと思うが)、相手にイエスと言わせる何かを彼は持っているのだ。
「…でも……恥ずかしい…」
「…大丈夫です…俺しかいませんから」
「んっ…」
何が大丈夫なのか納得出来なかったが、言葉を発する前に再び唇を塞がれた。
もう抵抗する気力も無くそのキスに応える。
それを了承と捉えたのか、彼の手がもう一度寝巻きの中へ侵入してきた。
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