第5章 ツンデレ、風邪を引く

「っ…、」

リアンくんの唇が私の額に触れる。
続いて瞼、頬の順に…
そしてついに唇同士が触れ合う……そう思ったが、彼は私の首筋に顔を埋めた。


「…ココに痕残していい？」

「なっ…、ダメに決まってるでしょ！」

とんでもない事を言ってくる。
彼は私の首にキスマークを付けようとしているのだ。


「けど…アンタのココ美味そう」

「ゃっ…」

首筋を舐められ、思わず体を竦ませる。
本当に痕を残されそうな気がして私は焦った。


「ちょ、ちょっとリアンくん！ホントにダメだから…！」

「…なんで」

「なんでって…」

「…じゃあさ」

「きゃっ…」

突然体を起こしたリアンくんに腕を引かれ、私はそのまま彼の膝の上に座る体勢となる。
彼は妖しい笑みを浮かべてこちらを見上げた。


「今日はアンタからキスしてよ」

「……は…？」

「そしたらキスマークは諦める」

「………」

…何言ってるの、この子？
キスマークは勿論だが、自分からキスなんて出来る訳がない。
それが彼に伝わったのか、私の背中に回された腕に力が込められる。
私を逃がさないとでも言うように…


「…キスしてくれなきゃ、今日は帰さねー」

「っ…」

「…ほら、早く。目瞑っててやるから」

「そ、そういう問題じゃ…」

「俺は別にキスマークでもいいけど」

どうしてその２択になるの…？
けれど彼は本気のようで、私を放してくれる気配は無い。

(…こうなったらもう自棄だ)

私は睨むように彼を見下ろした。


「…フッ……そんな顔しても、全然怖くねーし」

「う、うるさい！早く目瞑って！」

「…なんだよ、ムード無ぇな」

「無くて結構！」

彼の顔を両手で挟み、触れるだけのキスをする。
そして恥ずかしいと思う間もなくすぐに顔を離した。


「…これでいいでしょ」

「…は？そんなガキみてーなキスで満足するかよ」

「なっ…」

「キスってのはこうだろ」

「んっ…」

顔を引き寄せられ、今度は彼の方からキスをしてくる。
唇を唇で挟んだり、角度を変えながらチュッと吸ってきたり…
けれど意外にも、すぐに唇を離す彼。


「…ほら…アンタの番」

「……、」

「いい加減、観念しなよ」

「っ…」

吐息が掛かる距離で囁かれ、私はまるで操り人形のように自分から唇を重ねた。



.