第5章 ツンデレ、風邪を引く
「わっ…!」
リアンくんに腕を引かれ、彼のベッドの上に倒れ込む。
慌てて起き上がろうとすれば、ぎゅっと力強く抱き締められた。
「ちょっ、ちょっと…!」
「いいから大人しくしろって」
「放してっ…」
「…なんもしねーから。ただ添い寝してくれればそれでいい」
「……、」
ぽんぽんと頭を撫でられ抵抗をやめる。
当然の事ながら彼の体は熱い。
「風邪…私にうつして治す気?」
「別にそういうつもりじゃねーけど…。まっ、アンタがもし風邪引いたら俺が看病してやるから安心しなよ」
「………」
言い返す気力も無く、私は諦めて彼に身を委ねた。
トクントクンと響く彼の心音を聞いていると落ち着く。
(…人肌って、こんなに気持ち良かったっけ)
何だか急に眠くなってきた。
「…おやすみ」
囁くような彼の言葉を聞いた後、私はすっかり眠りに就いてしまった…
「…ん……、」
それからどのくらいの時間が経過しただろう…
ゆっくり瞼を開けば、目の前にはリアンくんの顔があって…
「っ…」
思わず出そうになった声を堪える。
彼はスースーと寝息を立ててまだ眠っていた。
「………」
じーっと彼の寝顔を見つめる。
改めて見ても本当に綺麗な顔立ちだ。
肌は白くてツルツルで、少し色素の薄い睫毛はとても長い。
そして形の良い唇に視線を落とした瞬間ドキリとした。
…以前キスされた事を思い出したからだ。
(…って私、何考えてるの)
恐らく今の自分は顔が赤い。
それでも彼の寝顔から目が離せなくて…
相変わらず見入っていると、突然彼の瞳がパカッと開いた。
「…!」
「…そんなに見られたら、顔に穴が開く」
「っ…リアンくん、起きてたの!?」
「アンタが起きた時に気配で目が覚めた」
「……、」
…なんて人が悪いんだろう。
だったら寝たフリなんかしないでほしい。
「…俺の顔に見とれてた?」
「なっ…、違います!」
「けど……顔赤くね?」
「っ…」
「なんか期待してる?」
「ちがっ…」
否定する前に、体を起こした彼が私の上に跨がってくる。
がっちりと私の両腕を掴んで…
「なぁ…キスしていい?」
「…!さっき何もしないって…」
「…あんなの嘘に決まってんだろ。つか、そんな可愛い顔してるアンタが悪い」
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