第5章 ツンデレ、風邪を引く
じっとこちらを見つめてくるリアンくんの視線に耐えられず俯く。
すると彼の、クスリと笑う声が聞こえた。
「前から思ってたけどさ……アンタって意外とこういうの慣れてないよな」
「え…?」
「男に対して免疫が無いっつーか……ひょっとして、男と付き合った事ねーの?」
「なっ…、失礼な!あるわよ!」
「…チッ、あんのかよ」
「………」
なんでそこで舌打ち…?
私だって学生の頃に男の子と付き合った事くらいある。
…人生で1度きりだけど。
「リアンくんこそ女の子の扱いに慣れてるみたいだし、さぞかしモテるんだろうね」
わざと嫌味を言ってみたが、彼はあっさり「モテるけど」と涼しい顔で肯定した。
…なんか悔しい。
「けど…いくら他のヤツに言い寄られたって、自分の好きな相手から"好き"って言われなきゃ意味ねーから」
「……、」
「だから…早く俺の事好きって言ってよ」
「っ…」
そう言いながら私の手を取る彼。
まるで逃がさないとでも言うように…
そして彼の唇が、私の手首に落とされた。
「リアンくっ…」
「…知ってる?手首にキスする意味」
「…え……、」
唐突な質問に戸惑いながら、緩く首を横に振る。
けれど彼は意地悪そうに笑って、「…内緒」と囁いた。
「も、もぅ!からかわないで!」
掴まれていた手を引き、勢い良く立ち上がる。
そして私は、恥ずかしさを紛らわすように「早く食べて寝なさい!」と彼に告げ、洗い物をする為キッチンへ向かった。
背後で聞こえる舌打ちには気付かないフリをして…
「ちゃんと薬飲んだ?」
「…飲んだ」
「じゃあ後はゆっくり休んで、早く治してね」
お粥を全て平らげた彼にそう告げる。
長居をしては彼もゆっくり休めないだろうと思い、そろそろ帰ろうかと準備を始めた時…
「なぁ…まさか帰る気じゃねーよな?」
「え…?」
「風邪で寝込んでる俺を置いて帰る訳?」
「…嫌な言い方しないでよ。私がなんか人でなしみたいじゃない」
「…だってそうだろ。苦しい思いをしてる俺を独りにするつもりなんだからな」
「………」
飄々とした顔でそんな事言われても…
今では本当に熱があるかどうかも怪しい(多分あるのだろうけれど)。
「ハァ…わかったわよ。もう少しだけいるから」
「じゃあ…こっち来て」
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