第5章 ツンデレ、風邪を引く
「わっ…!」
インターフォンを鳴らしてから数十秒後…
ゆっくりドアが開いたかと思えば、中から私に凭れ掛かるようにして出てきた人物がいた……リアンくんだ。
「ちょっ…、リアンくん……重い」
「…怠い……死ぬ」
「え…?」
そう言う彼の体は妙に熱い。
もしかして…
「…リアンくん、風邪?」
「………」
無言でコクリと頷く彼。
電話で「死ぬかも」なんて言うから焦って来てみれば…
「もぅ…驚かさないでよ。びっくりしたでしょ」
「…こうでも言わなきゃ、アンタ来てくれねーだろ」
「……、」
そう言って私を恨めしそうに見る彼の顔はほんのり赤く、瞳も潤んでいるように見えた。
「とにかく部屋に戻って、ベッドで休もう?」
「…何…一緒に寝てくれんの?…今日はやけに積極的じゃん」
「……。それだけ元気があれば、私の看病なんて必要無さそうだね」
「…チッ……冗談だろ」
舌打ちする彼に溜め息をつき、その体を支えながら部屋の奥へ足を踏み入れる。
マンションの外観同様、部屋の中もまるでホテルのスイートルームを思わせるような造りになっていた(実際スイートルームに泊まった事など無いが)。
「家の人…誰もいないの?」
「…つか俺、一人暮らしだし」
「えっ!?」
こんな広い部屋で一人暮らしとか…
やっぱり彼はどこかの御曹子なのだろうか。
そんな事を考えながら、彼をベッドに寝かせる。
「熱計った?」
「…計ってねー」
「もぅ…。ご飯は……その調子じゃ食べてないよね」
「…食欲ねーし。まぁアンタが何か作ってくれんなら、食べてやってもいいけど」
「………」
風邪を引いても彼のこの態度は変わらないらしい。
私はもう一度大きな溜め息をつき、「じゃあお粥作るから、ちゃんと食べて」と彼に告げた。
「体温計とか無いの?」
「…さぁ…どっかにあんじゃね?」
(……ダメだこりゃ)
彼に一言断ってから冷蔵庫を開ける。
意外にも、中には色んな食材が揃っていた。
これならまともな料理が作れそうだ。
「リアンくんて料理するの?」
「…しねーけど」
「その割には冷蔵庫の中充実してない?」
「……。週に数回、二階堂のヤツが来るからな」
(…二階堂さん?)
前に一度会った事がある、リアンくんの家の使用人だ。
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