第4章 まるで飼い主とペット
今はお客さんも少なく、リアンくんは店の一番奥の席に着いた。
「ご注文は?」
「いつもので。…つかさ、アイツ誰?」
「え…?」
そう言うリアンくんの視線の先にいたのは、他のお客さんの注文を取っている皐月くんで。
「ああ、彼は新しいバイトの子。皐月くんていうの」
「……ふーん」
「イイ子だし、仕事も出来るし……私も叔父さんもすごく助かってるんだ」
「…あっそ」
「…自分から聞いておいて、何よその反応」
「…うるせぇよ鈍感」
「なっ…、ホントに可愛くないんだから…」
私は彼の注文を取ると、一度キッチンへ向かった。
それから叔父さんにコーヒーを淹れてもらい、再び彼の元へ戻る。
「なぁ…今日は何時上がり?」
「んー……特に何も無ければいつも通りだと思うけど」
「…じゃあその時間まで待ってる。飯食いに行こうぜ」
「え…?」
「いいだろ別に…俺奢るし」
「……、」
突然の誘いに一瞬戸惑った。
確かに断る理由は無いけれど…
「アンタ…顔にゴミ付いてる」
「えっ、嘘…?」
「…ほら、ここ」
私の顔に手を伸ばしてくる彼。
無意識に顔を近付けると、唇にチュッと触れるだけのキスをされた。
「なっ…」
「ホント、アンタって警戒心無さ過ぎ」
「っ…、仕事中に何するの!」
小声で抗議すると、彼は意地悪そうな笑みを浮かべる。
「へぇ…仕事中じゃなきゃいいんだ?」
「ちがっ…」
ああ言えばこう言う…
幸いお客さんは少なかったので、誰にも見られてはいないと思うが…
「もぅ…ばか!」
私はそう悪態をついて仕事に戻った。
(ホント、何考えてるの…)
それからリアンくんは本当に閉店まで居座った。
後片付けをした後、いつものように着替えて店を出る。
「…お疲れ」
「……、」
予想はしていたが、そこにはリアンくんがいて。
更にその隣には皐月くんも立っている。
帰りはいつも皐月くんに送ってもらっているが、今日は断らなくては…
「皐月くんごめん、今日は…」
私がそう言い掛けた時…ぐいっとリアンくんに腕を引かれた。
「この人、俺のだから」
(え…?)
皐月くんに向かってそう言うリアンくん。
突然何を言い出すの!?
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