第4章 まるで飼い主とペット
「いきなりこんな事言われても困りますよね……すみません」
「……、」
「でも俺本気だから…ちゃんと言っておきたくて」
「皐月くん……」
「返事は今すぐじゃなくてもいいんで……良かったら考えておいて下さい」
そう言って彼は料理に戻る。
私もすぐに包丁を持ち直したが、その後は終始上の空だった…
「2人とも今日はありがとう」
みんなで夕飯を食べ終えた後…
私と皐月くんはそろそろ帰ろうと古林さんに挨拶をしていた。
「相沢さんも、良ければまた来て下さい。子供たちもすっかりあなたに懐いてしまったようで…きっと喜びますから」
「はい、是非またお邪魔させて頂きます」
「それじゃあ古林さん、また来るね」
「ああ。何か困った事があったら、いつでも相談に来ていいからな」
「うん、ありがとう」
そう別れの挨拶をして私たちは施設を去った。
先程の事もあり、皐月くんと2人で並んで歩くのは何となく気まずい。
「桜子さん…ホントにすみません。いきなりあんな事を言ってしまって……。やっぱり迷惑でしたか?」
「えっ…ち、違うの…!迷惑とかじゃなくて…その…いきなりだったからびっくりしちゃって…」
それは本当だ。
彼のようなイイ子に好意を持たれて嬉しくない訳がない。
ただ、彼の事をそういう目で見た事がなかったから…
「あの…俺がこんな事言うのは何なんですけど…。桜子さんと気まずくなるのは嫌なんで……出来れば今まで通り普通に接してくれませんか?」
「……、」
それは私も同じ気持ちだ。
短時間とは言え、彼とはお店でほぼ毎日顔を合わせる訳だし…
私はこくりと頷いた。
それを見てホッとしたのか、さっきまで表情の硬かった彼にもようやく笑みが零れる。
その後私たちは、他愛のない話をしながら帰路に着いた…
それからまた数日後…
「…よぉ。久しぶり」
「………」
店に現れたのはリアンくんだった。
ストーカーの件が解決してからはほとんど会っていなかったので、彼の言う通りこうして顔を合わせるのは久しぶりだ。
「大学の帰り?」
「ああ。最近ちょっと立て込んでたから…アンタに会えなくて淋しかった」
「……、」
相変わらずストレートにものを言う子だ。
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