第4章 まるで飼い主とペット
「皐月は本当に優しい子で…。施設を出た後もこうして定期的に差し入れをしてくれたり、子供たちの相手をしてくれたり……でも私はそれが少し心配なんです」
「心配…?」
「ええ……皐月にはもっと自分の幸せを一番に考えてほしいんですよ。私の跡を継いでくれるという話も勿論嬉しいんですが……彼が心の底から『継ぎたい』と思って言ってくれているのか…それとも、私に恩を返す為にそんな事を言っているのか…。もし後者だとすれば、私はキッパリ断ろうと思っています」
「古林さん…」
「私は独り身なので、何の足枷もありませんが…。皐月にはこれから好きな人が出来て、結婚だって考える時が来るかもしれません。そうなった時、この施設を背負っていくにはあまりにも大変でしょう。だから正直、私は反対なんですよ」
「……、」
「ああ、すみません…初対面の方にこんな話を…」
「い、いえ…」
「今の話…皐月には黙っておいてもらえますか?」
「はい、勿論です」
「いずれ私からきちんと話そうと思っているので…」
(古林さんは本当に皐月くんの幸せを願ってるんだ…)
その気持ちが痛い程伝わってくる。
私たちがそんな話をしていると、それまで子供たちと遊んでいた皐月くんが部屋に入ってきた。
「古林さん、子供たちお腹空いたって」
「ああ、もうこんな時間か…。良かったら皐月たちも夕飯食べていかないか?」
「え…?」
「相沢さんも是非食べていって下さい。大勢の方が子供たちも喜びますから」
「えっと…それじゃあ、お言葉に甘えて」
「じゃあ…俺も」
「良かったら、私にもお夕飯作るの手伝わせてもらえませんか?」
「いいんですか?それは助かります」
そうして私は夕飯作りのお手伝いをする事になった。
仕事以外で誰かの為に食事を作る事はなかなか無いので、つい張り切ってしまう。
ハンバーグとカレーが大好物だという子供たちに、私はハンバーグカレーを作る事にした。
「さすがは桜子さん、手際がいいですね」
私の隣で野菜を切る皐月くんがそう声を掛けてくる。
「皐月くんだってすごく手慣れた感じだよ」
「ははっ、料理は好きなんで割と自炊してるんです」
私たちがそんなやり取りをしていると…
「わぁーい、しんこんさーん!」
背後から子供の声が聞こえた。
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