第4章 まるで飼い主とペット
「みんな、元気にしてたか?」
「うん!」
子供たちと目線の高さを合わせた彼は、そう言いながらみんなの頭を撫でていく。
そのうちの1人が、不思議そうに私の方を見上げた。
「皐月兄ちゃん、このお姉ちゃん誰?」
「え…っと……、この人は…」
皐月くんがどう説明しようか悩んでいると…
「あー、わかった!お兄ちゃんのカノジョだー!」
1人の女の子がそんな事を言い出した。
思わず互いの顔を見合わせる私と皐月くん。
子供の言った事とは言え、つい顔が赤くなってしまう。
皐月くんは慌てて否定したが、子供たちはしばらくそれをネタに彼をからかっていた。
(恐るべし、現代の子供……)
「いやぁ、よくいらっしゃいました」
それから中に通された私は、施設長さんの古林さんにお茶とお菓子を振る舞われた。
皐月くんはまだ外で子供たちと遊んでいる。
「突然お邪魔してすみません」
「なぁに気にしないで下さい」
そう笑う彼は、話に聞いていた通りとても優しそうな男性だった。
年は50代半ばといったところだろうか。
私は自身の素性を明かし、皐月くんと知り合った経緯を簡単に話した。
「そうでしたか…。皐月はああ見えてあまり人には心を開かない子でしたから…少し安心しました」
「…え……そうなんですか…?」
少し意外だ。
彼はどちらかと言えば人懐こい性格だと思っていたから…
「まぁ人当たりはいいんですけどね。育った環境が環境ですから…人の顔色を窺うような子になってしまって」
「……、」
「彼は小さい頃から我が儘も言わなかったし、他の子供たちとは違っていたんですよ。良く言えば大人びていましたが……悪く言えば子供らしくなかったというか…」
年齢の割に落ち着いているのは、子供の頃からだったという事か。
「本当は高校にも行かせてあげたかったんですが…彼は頑として働きたいと言って聞かなくて…。私の言う事を聞かなかったのはその時だけですかね」
「でも…皐月くん、将来は古林さんの跡を継ぎたいって言って今は大学に行ってるんですよね」
「ああ…そんな事まで話してるんですか。皐月はあなたの事を本当に信用しているんですね」
そう言って古林さんは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐにその顔を曇らせた。
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