第4章 まるで飼い主とペット
「あの…アルバイトの募集してるんですか?」
「うん…。実はスタッフの女の子が怪我をしちゃってしばらく出て来られそうにないの。それで急遽ね」
「あっ…じゃ、じゃあ俺っ…立候補してもいいですか?」
「えっ…」
「カフェのバイトならした事があるんです」
「それは本当かい!?」
食い付いてきたのは叔父さんだった。
カウンターから身を乗り出して皐月くんに迫っている。
「は、はい…。大学があるんで、夕方からしか出られませんけど…」
「それは助かる!昼間は桜子ちゃんと2人で回せると思うんだけど、せめてもう1人いないと休憩に入れないからね」
「あの……それじゃあ…」
「是非ともこちらからお願いするよ!」
そう言って叔父さんは皐月くんの肩を叩いた。
彼なら接客にも向いていそうだし、何より経験者なら心強い。
それから彼の簡単なシフトを決めた後、開店時間になったと同時に皐月くんは店を出ていった。
「いやぁ、思わぬところでイイ人材を見つけたなぁ」
「何とかなりそうで良かったね」
「これも人助けをしたお陰か」
確かに、人との縁なんて何気ないところから生まれるものなのかもしれない。
もしあの日、皐月くんの自転車が店の前でパンクしていなければ…
そして私が彼に声を掛けていなければ…
彼とこうやって話す事もなかっただろうし、況してやお店で働いてもらう事になんてならなかっただろう。
そう感慨深く思いながら、私は今日も1日頑張ろうと気合いを入れた…
「うん、皐月くんバッチリ似合ってる」
「そ、そうですか…?」
あれから2日後…
今日から早速皐月くんに働いてもらう事になった。
白いワイシャツにギャルソンエプロンを身に付けた彼はとても様になっている。
それから基本的な事を彼に教えたが、その飲み込みの早さには驚かされた。
さすが経験者というだけあり、すぐ即戦力になってくれそうだ。
「皐月くんが入ってくれて良かった…。これからよろしくね」
「はい…!こちらこそよろしくお願いします」
そうして1日目は無事終了した。
着替えを済ませ店を出ると、そこには皐月くんの姿があった。
「あれ…皐月くん、どうしたの?」
「俺…桜子さんを家まで送ります」
「え……でも…」
「送らせて下さい」
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