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*トライアングル*【R18】

第25章 苦い過去





「も、もしかしてあなたは…!」

「ああ…このホテルは我が社の傘下にある。私は社の代表取締役だ」

「…!」

こんなところで職権乱用をするつもりなど無かったが、背に腹は変えられない。
信じられないものでも見るかのように、パクパクと口を動かしている彼の胸ポケットに名刺を突っ込んだ。


「何かあれば責任は私が取る。彼女の部屋へ案内してくれ」

「か、畏まりました!」

ぺこりと直角にお辞儀をした後、彼は早速その部屋へ案内してくれた。


(…さて、ここからどうしたものか)

当然俺が部屋を訪れても、彼女はドアを開けてくれないだろう。
やはりこのボーイにひと芝居うってもらうしかないか…


「君にもうひとつだけ頼みがある…」

「…?」










*side リアン*


──ドンドンドン!


「…!?」

突然部屋に鳴り響いた、ノックというにはあまりに乱暴な音。
今まさに俺のモノを突っ込もうとしていた彼女も当然驚き、「一体何なのよ」と苛立ちながらドアの方へ向かった。

(…今のうちに……)


「くっ…」

さっきより少しは動かせるようになったとは言え、まだ言う事を聞かない体。
おまけに媚薬のせいで体の熱は燻ったままだ。
それでも何とか下着とズボンを上げ、ベッドの端に置いてあったスマホを取り返す。
その瞬間、ドアの方から「火災が発生しました!」という男の声が聞こえてきた。


「何ですって!」

「お客様も早く避難して下さい!」

知らせに来たのは従業員だろうか?
ドアチェーンをしていたらしい彼女が慌ててそれを外すと、部屋の中に2人の男が乱入してきた。


「ちょっ…、あなた!」

1人は予想通りこのホテルのボーイで…
もう1人は……


「兄貴…」

「…全く世話の焼けるヤツだ」

「……、」

ハァとわざとらしく溜め息をついた兄は、さっさと部屋からボーイを追い出すと彼女の方へ視線を向けた。


「困りますよ玲香さん…弟を誑かしてもらっては」

「っ…、火事っていうのは嘘だったの?」

「ええ…そうでも言わないと開けてもらえないと思いまして」

「………」

この状況に当然驚いている彼女。
それは俺も同じだったが…

(どうして兄貴がここに…)



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