第25章 苦い過去
そんな自信、どこから出てくるんだと自分でも驚くような台詞。
例え体を奪われたとしても…
あの人に自分の惨めな写真を見られたとしても…
俺は死んでも"他の女とセックスしたい"なんて言わない。
「そう…よく解ったわ。あなたが私に逆らった事…今からたっぷり後悔させてあげる」
「………」
*side ジョエル*
(なんだ…アイツもう帰ったのか?)
ついさっきまでパーティーの主役である玲香と一緒にいたはずの弟の姿が見えない。
俺が席を外しているうちに帰ってしまったのだろうか?
「………」
姿が見えないのは彼女も一緒…俺は嫌な予感を覚えた。
──林 玲香。
彗星の如く現れた期待の新人小説家。
その美貌と才能は各メディアを騒がせている程だったが、彼女には良くない噂もあった。
これまで彼女が書いた小説は、ドラマ化が2本、映画化が1本とかなり話題になっている。
けれどそれと同時に、自分の気に入った若手俳優と次々に体の関係を持っているとも報じられていたのだ。
彼女の私生活になど興味はないし咎めるつもりもないが、腹違いとは言え自分の弟がその毒牙にかかっているとしたら…?
(ハァ……俺の思い過ごしであればいいが…)
「すまないが、そこの君」
近いにいたボーイに声を掛ける。
すると彼は直ぐ様愛想笑いを浮かべ、こちらへ歩み寄ってきた。
「何でございましょう」
「金髪の若い男を知らないか?私の弟なんだが…さっきまで会場にいなかっただろうか」
「ああ、その方でしたら…ご気分が優れないという事で、私がお部屋に案内させて頂きました」
「…部屋?」
「はい。林 玲香様のお知り合いの方という事でしたので…彼女のお部屋に運ばせて頂いたのです」
「………」
嫌な予感は的中した。
きっとリアンはそこであの女の餌食にでもなっているのだろう。
(…あの馬鹿……)
「彼女の部屋が何号室か教えてもらえないか?」
「も、申し訳ありませんが…お知り合いの方とはいえ、ご本人様の許可が無い限りは…」
「………」
それはそうだろう…客のプライバシーに関わってくる事だ。
「そうか…このホテルの従業員はしっかりしているようで安心したよ」
「…え?」
「私はこういう者だ」
差し出した名刺。
彼はそれを見て大きく目を見開いた。
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