第25章 苦い過去
彼女は一度ベッドを下りると、ハンガーに掛けてあった俺のジャケットのポケットを漁る。
そしてまんまと俺のスマホを探し当て、それを持って再びこちらへ戻ってきた。
「何して…」
「ふふ…まずは記念に1枚。上手く撮れたわ…後で私のスマホにも送っておかなきゃね」
「っ…」
「これをカノジョに送るか送らないかはリアンの返答次第よ」
そう言いながらスマホを操作する彼女。
「へぇ……あなたのカノジョ…"桜子"ちゃんて言うんだ?」
「…!さっきは俺とカノジョの仲をどうこうする気なんか無いって言ってただろ!」
「そのつもりだったけど…リアンたら全然私の事見てくれないんだもの。気が変わっちゃった」
「………」
そんなの当たり前だ。
俺はあの人以外の事なんか微塵も興味が無いのだから。
「そのクスリを飲んでも理性を保ってるってホントすごいわね…それだけは褒めてあげる」
「………」
「でもそれだけ今のカノジョに夢中って事でしょう?何だか妬けちゃうわ」
そんな勝手な事を言い、彼女は2枚3枚と写真を撮っていく。
…屈辱的だった。
体の自由を奪われ好き勝手される自分が。
この悪夢は一体いつまで続くのか…
「そんな顔しないでよ…リアンが私の言う事聞いてくれたら、この写真だってちゃんと削除してあげるわ」
「……何が望みだ」
「あら…やっとその気になってくれた?」
そう言って一度スマホを置いた彼女は、再び俺の頬を撫でてくる。
「それじゃあリアンの口から聞きたいな……『玲香さんとセックスしたい』って」
「……は?」
「『カノジョとじゃなくて、玲香さんとセックスしたいです』って言ってよ。そしたら今撮った写真削除してあげる」
「………」
何を言ってるんだ、この女は…
そんな事言える訳…
「言えないんだったら……解ってるわよね?」
「………」
その写真をあの人に送るとでも言うつもりか…
だったら勝手にすればいい。
「…送りたきゃ送れよ」
「…え……?」
「俺はもう昔の俺じゃない…。アンタのオモチャじゃねぇんだ」
「…リアン……?」
「俺とセックスしたきゃ、勝手に突っ込んで1人で腰振ってろ」
「なっ…」
「言っとくけど…そんな写真送ったところで、カノジョは俺の事を嫌いになんかならねぇから」
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