第22章 ゆく年くる年
神社は家から15分程歩いた所にあった。
そこまで大きな神社ではないけれど、さすがに今夜は大勢の参拝客がいる。
「皐月くんも初詣には毎年来てるの?」
「いえ…。施設にいた頃は毎年古林さんに連れてきてもらってたんですけど…一人暮らしを始めてからは来てないですね」
「そっか…」
「でも今日はどうしても桜子さんと一緒に来たくて…。俺の我が儘に付き合ってくれてありがとうございます」
「そんな、我が儘だなんて…」
私だって皐月くんとこうして一緒にいられて嬉しい。
そうこうしているうちに除夜の鐘が響き始めた。
(今年も残り10分ちょっとか…)
参拝の列に並びながらふとそんな事を考える。
それは皐月くんも同じだったのか、繋いでいた手に少しだけ力を込めてきた。
「桜子さん…今年は色々ありがとうございました」
「え…?」
「俺…この半年間ホントに幸せで……桜子さんにはいくらお礼を言っても言い足りません」
「皐月くん…」
「だから来年も…」
彼がそう言い掛けた時、コートのポケットに入れていたスマホが振動する。
「ちょっとごめん」と言ってディスプレイを確認すると、そこには『リアンくん』の文字が…
「も、もしもし…?」
『…俺。そっちはそろそろ日付け変わる頃だろ?』
「うん…」
『今何してんの?』
「えっ…、と…」
『なんかガヤガヤしてるし…外?』
「……、」
どうしよう…皐月くんと一緒にいるとは言いづらい…
けれど私が答える事に戸惑っていると、不意にスマホを取り上げられた……勿論皐月くんの手によって。
「リアンさん?今桜子さんと初詣に来てるので邪魔しないで下さい」
「ちょっ…皐月くん!」
『チッ…やっぱりお前も一緒か』
「ええ、今年最後の日ですから…。リアンさんは大変そうですね」
『お前…全然そう思ってねぇだろ?』
「皐月くん、返してってば!」
今度は私が彼からスマホを奪う。
うぅ…リアンくんに何て言い訳すれば…
「あ、あの…リアンくん…」
『…別に気にしてねーから。予想はしてたし』
「……、」
『その代わり…日本に戻ったらたっぷりアンタの事抱かせてもらうから覚悟しといて』
「っ…」
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