第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
「あの…じゃあ、二階堂さんていうのは?」
「ああ…うちの使用人」
「…え?」
使用人て…お金持ちのお屋敷にいる、執事さんとかメイドさんみたいな人の事…?
「…リアンくんてお坊っちゃまなの?」
「は?」
「いや、だって普通の一般家庭には使用人なんていないから」
「………」
それ以上答えたくないのか、リアンくんは黙ってしまった。
…とそこへ、1台の車が近付いてくる。
公園の入り口で停まった車からは1人の男性が降りてきた。
眼鏡を掛け、スーツを着た背の高い男性だ。
「リアン様、お待たせ致しました。こちらが例の男ですか?」
そう言って、男性は今だ拘束されているストーカーに視線を向ける。
この人が二階堂さんだろうか?
「ああ…後は任せる」
「畏まりました」
リアンくんに一礼した男性は、私にも軽く頭を下げてきた。
「貴女が相沢様ですね?私はリアン様にお仕えしている二階堂と申します。以後お見知り置きを…」
「は、はぁ…」
訳が解らないまま一応頭を下げる。
二階堂さんは拘束されている男に近付くと、暴れる男に何かスプレーのような物を吹き掛けた。
その瞬間、ぐったりと気を失う男。
「ちょ、ちょっとリアンくん…!」
「安心しろ…眠らせただけだ。騒がれたら面倒だからな」
「……、」
気絶した男を抱えた二階堂さんは、彼をズルズル引き摺るように車へ向かう。
「リアンくん…あの人をどうする気?」
さっき彼は、ストーカー男を警察には引き渡さないというような事を話していたが…
「とりあえずこの国からは出ていってもらう」
「え……どういう事?」
「…アンタが知る必要は無い」
「………」
何だか物凄く犯罪の匂いがするのは気のせいだろうか?
私は急に怖くなってきた。
「安心しろよ…別に殺したりする訳じゃねーし。それに、アンタには絶対迷惑掛けない」
「……、」
キッパリとそう言われ、それ以上は何も言えなくなってしまう。
男を車に乗せた二階堂さんは私たちにもう一度頭を下げると、そのまま車で走り去っていった。
(これで…解決したの…?)
ストーカーに悩まされていたこの10日間。
これでようやく平凡な日常が戻ってくる…
そう安堵したと同時に、私はへなへなとその場にしゃがみ込んでしまった。
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