第3章 恋は盲目、ストーカーは犯罪
翌日…
今日は休日だったが一日中雨が降っていたので、私は家で大人しくしていた。
昨日あんな事があったばかりだし、例え晴れていても1人で出歩く気分にはなれなかったが…
♪~♪~~
「…?」
夕飯を食べ終え、そろそろお風呂にでも入ろうかと思っていた頃、ふと携帯の着信音が鳴った。
ディスプレイを確認すると、そこに表示されていたのはリアンくんの名前で。
(こんな時間にどうしたんだろ?)
彼とは知り合ったばかりの頃に電話番号を交換していたが(正確にはさせられた)、こうして電話が掛かってきたのは初めてだ。
「…もしもし?」
『…俺。アンタ、今家?』
「うん…そうだけど」
『…ストーカー野郎の正体が判った』
「えっ…ホント!?」
『ああ…。今アンタんちの近くにある公園にいるんだけど……今から出て来れる?』
「わかった、すぐ行く!」
そう答えて電話を切った。
最低限の身だしなみを整え外へ出る。
雨はすでに止んでいた。
(ストーカーの正体って……一体誰なんだろ…?)
正直知るのが怖くもある。
けれどこれ以上怯えながら毎日を過ごすのも嫌だ。
逸る気持ちに比例し、歩を進める足も自然と速くなる。
公園まであと少し…
その時だった。
「…!」
目の前に突然現れた影。
驚いた私は声も出せず、ただ体を硬直させる。
暗闇の中で目を凝らしてみると、その人物には見覚えがあった。
うちの喫茶店によく来ている男性客だ。
「き、君がいけないんだよ…」
男の声は震えていた。
そしてその手には、ギラッと鈍く光るナイフが握られていて…
(ま、まさかこの人が…?)
「どうして振り向いてくれないの?君を一番愛してるのはこの僕なのにっ…!」
「……、」
「あんなチャラチャラした男なんかより、僕の方が君を幸せに出来るんだ!」
じりじりと近付いてくる男。
その目は最早正気ではない。
やはり一連の嫌がらせはこの人が……
「君が僕を選んでくれないなら、君を殺して僕も死ぬ」
「…!」
この人は本気だ。
大声で助けを呼びたかったが、恐怖に震え上手く声が出せない。
(助けて、リアンくん…!)
心の中でそう叫んだ瞬間…
「…ようやく尻尾を出しやがったか」
「…!」
すぐ後ろで聞き慣れた声がした。
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